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合言葉は「もう限界。」゚.+:。(´∀`)゚.+:。
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断片出しでごっつ申し訳ないんですが、暇つぶし程度にごっふごっふ(身も蓋もない)
私は人様の書きかけというか、一場面描写を出していただいて読むだけでも、結構楽しめちゃう奴なので、許してもらえないかなーなんて。
もうなんで文になるとこんなに自信ないのかな。すいません。(汗)
これ以上つづくかも怪しい。
そんな無責任な投下を許してくださる寛大なお客様はどうぞ。
ゼルアメです。






獄中













「刑の執行は明朝と致しましょう。姫殿下」

鎧の音だろうか。上等の黒いマントをはためかせ甲冑を纏った男が、軽快な足取りで近づいてくる。
その後ろには薄暗い牢には不似合いな、白いドレス姿の淑女を伴っている。
見るからにかぐわしい妙齢の乙女である。

「しかし、セイルーンは面妖な番犬を飼いなさる。」
「…なんですって…」
「人ならざる者とはいえ、まさかこの砦に単身で飛び込む程の愚か者が、あれだけ強力な力を備えているとは、驚きでした。
手勢もひどく痛めつけられましてな。捕まえるのに随分手を焼きましたぞ。」
「よくもぬけぬけと言えたものですね。彼への侮辱はこの私が許しませんよ。…あの方はセイルーンに組する者ではありません。彼は私の旅の仲間なのです。」

男は首を傾げて娘の顔を覗きこむと、「ほう、お仲間。」と、さも意味ありげに顔を歪ませる。
笑ったらしかった。
これは滑稽だ。実に面白いと、ぼつりぼつりと呟きながら、脳裏にその姿を思い浮かべているのか、上機嫌で顎鬚を撫でつけながら、なお言い募る。

空の拳を握り締めて、アメリアは黙した。
普段は晴れ渡った空の下、瞬く豊かな水面を彷彿とさせるような彼女の瞳も、今は怒りのあまり火を灯したような激しさで、一点を見据えて燃えている。

看守の手入れも十分に行き渡ってはいないのであろう。
腐乱した囚人の食事の残骸を鼠がいじり、猛烈な臭気があたりに充満している。
アメリアの姿を見るやいなや、鉄格子に貼り付く囚人達は口々に下卑た甲高い悲鳴を浴びせた。
それをものともせず、少女は足早にこの男の後を追いかけた。


二人が辿りついたのは、他の囚人達からも遠ざけられた最奥の牢。
格子も食事を通す穴さえないのっぺりとした扉の怪しさが、否応なく収容する者の罪状の重さを表している。
それまで通りすぎてきた牢とは異なり、水を打ったように静まりかえっていた。

「しかし虜の身である貴女の申し出をやすやすと受け入れる私も、なかなか慈悲深い男だとは想いませんか。」
「私はこの館に来て一度たりとも慈悲など受けた覚えはありません。もちろんそれはこの先も変わることはありませんよ。」
「随分と手厳しいですな。では、せいぜいご友人と最後の別れを惜しまれるが良かろう。」

そう言うと男は、ゆっくりとその扉を押し開いた。


灯りもない真っ暗な室内に目を凝らすと、ぼんやりと確かに人影が見て取れるのだった。
石壁から伸びる鎖の先には見るからに頑丈な手枷がついており、膝を折ってうな垂れるその人を容赦なく虜にしている。
冷え切った床に黒々と閃く鉄球が四つ、まばらに鎮座している。
大の男が一つの鉄球を引き擦るのにも根を上げる事を思えば、常人にするにはあまりに念の入った枷である。
すっかり痛めつけられた身体に、気休め程度に着せられた穴だらけの法衣服。
ゼルガディスの変わり果てた姿であった。

「ゼルガディスさん!!」
「それ以上近づくと後悔なさいますよ。姫殿下。」

その言葉に、寸でのところで踏みとどまったアメリアの眼前に、突如緑光の結界が立ち上る。

暗がりではわからなかったが、ゼルガディスを取り囲むように、円形の魔方陣が敷かれていたのだ。
アメリアが静かに片足を退くと、たちまち結界は失せてしまった。
瞬間的に侵入者を察知して発動するもののようである。

「彼を…拷問にかけたのですね。」
「いかにも。しかしなかなか屈強な青年ですな。とうとう口を割りませなんだ。」

いかに罪人を投獄する牢とはいえ、そのあまりの厳重さに平静を装いながらも、アメリアは暫し唖然とした。
「この人を明朝までにこの牢から出さねばならない。」という差し迫った一念とは裏腹に、アメリアの胸に焦りと不安が渦巻く。

「明朝お迎えに上がります。それ以上刻限は延ばされません事、お忘れなく。」

男がそう言い終えると扉は主の命に従い、再び音もなく二人を闇に投じた。



「ゼルガディスさん…!私です。アメリアです。…気をしっかり…。」
近づくと血の匂いが立ち込める。
それを認めるように彼の白い法衣にはてんてんと血が滲んでいた。

「どうか目を開けて。」

アメリアは祈るような気持ちで呟いた。

男が緩慢な動作でこちらを見上げた。

「…待ったか?」

刃物で傷つくことのない体を持つはずのゼルガディスである。
魔力を込めた道具か何かでひどく殴られたに違いない。
額からは血を流し、岩肌ではわかりにくいが、かなり体力を消耗しているようだ。
それでもゼルガディスは柔和な微笑を称えてこちらを見やった。

「…ごめんなさい。ゼルガディスさん。私のせいでこんなひどい怪我を。」
「なんだ、水臭い物言いだな。暫く会わない間に随分しおらしくなったんじゃないのか。」

少女に気を遣わせまいと、虚勢を張るのか、ゼルガディスは満身創痍に似合わぬ軽口を叩いた。

「いつもの元気は何処へ行った。…アメリア。」

その声色は、長らく会う事のなかった時間を埋めてなお溢れるような、
慈しみに満ちたものであった。
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